渓流釣り遡行記2019
高知東部水系 2019/3/30 雨
高知東部水系 2019/3/30 雨
釣友が古い在来アマゴの調査研究論文を目にしたところから釣行計画がはじまった。
論文の概要は養殖場のアマゴと
①積極的に放流が行われている川
②堤防があるために上流が封鎖されている川
③堤防がなく魚の行き来が可能な川
アマゴのDNAを採取して遺伝子マーカーの差異を比較し在来アマゴの存在を釣査しようとするものであった。
結論は②の堤防より上流に在来アマゴが残存し堤防より下流の放流アマゴと棲み分けられていた。また、③の堤防がなく魚の往来ができる川には放流魚と在来種の遺伝子浸透が確認されたとなっている。
15年以上前の論文なので現在ほどアマゴの種が乱れていない時代のものにせよ結論ありきの匂いがするのでまるっきり信頼している訳ではない。在来アマゴの釣査に行こう。
素朴な疑問、何を持って在来種と判断するのか?
論文の中には在来アマゴの写真がないだけでなく、個体の特徴を示す記述すらない。
長年の経験と勘を頼りに見た目で『在来種ぽさ』を導き出す・・・・実に曖昧でアナログ的な方法しかないけど自分自身がある程度の納得を得られればいいだけなのでご容赦下さい。
釣査に選んだのは③の堤防がなく魚の往来ができる川、②の堤防を隔て在来魚と放流魚が棲み分けしている川を調査対象にするのが本来の形だが川の長さが短く釣りの魅力に欠けそうだと判断した。
また、車道が直ぐ横を付き15年以上前の川の状勢とは全く変わっているように思えた。(放流魚を放流しようと思えばいつでも出来る)
③の川も車道は通っているものの100m以上の標高差がある。
放流魚と在来種の遺伝子浸透があるなら在来種の遺伝子が優性遺伝として現れる可能性があるので容姿が異なったアマゴが釣れれば比較しやすいのではないかと考えた。
尾根を下り渓底に下ってきた。
地図で見た通りでメチャ緩い渓だった。
水がなくなるまで遡行したが滝らしい滝が源流部に一つあるだけでこれなら魚の往来が容易い、論文と異なるのは堤防が二つできていてプレートには平成18年が刻まれているので論文が書かれた後に施行されたものだ。
改めて15年以上と云う年月は一昔も二昔も前のことなので古い論文を元にした釣査が意味があることなのだろうかと思えた。
まぁ、『アマゴ在来種釣査』と云うロマンに感性を刺激され突き進んでいる行動だから決して無意味なことではない筈だし、必ずしも正しい答えを導き出せるとは思っていない。
標高の低い渓だけあってウグイやアブラハヤに混じりアマゴが釣れる。
ウグイはエンテの下だけ、アブラハヤは支流を越えると姿見えなくなった。
基本的には上の写真ようなアマゴが多い オレンジの朱点多く、パーマークは整っているが数は9~11個と不規則、腹部の黒点大きくエラに数個続いているのが一番の特徴だろうか?他の水系でも見かける放流アマゴに似ているのでめずらしさはない。
それにしても緩い渓だ。
最後までこんなのだろうかと心配していると渓の流れが蛇行をはじめたらそれなりの深みを持った淵が少しずつ現れるようになった。
「在来アマゴの釣査に行こう」と言い出したのは源流テンカラ師の村兆さん、彼もこの手の話が大好きで源流通いをしている。
「緩い渓だからテンカラ向きじゃない」と聞けば「この緩さは苦手で落ち込みと淵が欲しい」と緩すぎる渓への不満を口にした。
両斜面の植生は標高が低いため常緑樹の天然林、岩に付いた苔と合わせてこの時期にしては緑が濃く渓も流れを囲む雰囲気が全く違っていた。
村兆さんが気持ちいいくらいにピッシと合わせた8寸前のアマゴは今まで釣れていたアマゴと違っていた。
体高があってぼやけたパーマーク、背中と腹部の黒点のバランスがいい 在来アマゴっぽさに期待が膨らむがこれ1尾では何とも言えない。
本日最大の良淵
淵の真ん中に仕掛けを入れると先に小さなアタリがあった後に竿先が持って行かれるようなアタリに合わせを入れた。
強い引きの横走りが楽しい、浮かせると後ろがやかましく「尺あるんじゃない」と声を掛けられたが1cm足らずの泣き尺だった。
相棒が釣った8寸前とよく似たアマゴ
これほど腹部の黒点がビッシリと付いているのは珍しい。
それと個人的に在来種を判断する上で最も重要視している朱点と背中の黒点の重なりが見られたのが在来ポイントを高くした。
残念なのは側線より下に朱点が何個かあったくらいか? それにしてもしゃくれた下顎が男前の顔つきをさらに精悍なものにしている。
相棒が掛けた8寸、コイツも上の2尾と同じ特徴を持っていた。
このタイプが在来アマゴなのか?
放流アマゴと共存していることを考えれば交配するのは必然だから在来アマゴの可能性は低いと思われる。
表現を変えれば『在来の遺伝子をもった在来タイプ』ってことにしておこう。
「緩い渓とは相性が悪い」などと文句を云いながらも源流に近付けば渓相が良くなった。
下の写真の淵でアタリすらなかったのは意味が分からないが・・・・
なんと初めての滝、そして初めての高巻き(10mくらいだけど)高知東部水系には緩い渓が沢山あって物足りなさを感じていたが源流を詰めればそれなりに面白い。
最源流の二又、ここまで来れば水量はなくなる。
さらに渓を詰めると車道と交差し下れば車止めへと続いている。
昔は車が通れたかも知れないが至る所に崩落や陥没があってその役目を果たしていない。
今年初めての新規開拓釣査、在来アマゴには出逢えなかったけど在来アマゴの遺伝子を継続していると思われる良いアマゴに逢えたのは収穫だった。
遡行データ
高知東部水系
釣果:18尾、最大:29.0cm、キープなし
遡行距離:10.7km、標高差:220m
高知東部水系
釣果:18尾、最大:29.0cm、キープなし
遡行距離:10.7km、標高差:220m
コメント