その根拠は紀伊水道を挟んだ紀伊半島に岩魚の南限とされるキリクチ、瀬戸内海を挟んだ中国山地にコギの天然繁殖が確認されている。もし四国に岩魚の天然分布が存在するならヤマトイワナ系(キリクチ)、あるいはコギ系でなければならないが四国の岩魚はニッコウ岩魚しか釣れない。そのルーツは1973年に本川の桑瀬川で試験放流した富山産のニッコウイワナを岩魚が釣りたい釣り人の手で周辺の渓へ持ち込んだ岩魚の子孫だとされている。
1990年台の初め、山師から聞いた話と少々胡散臭い尾鰭は付くが桑瀬川に岩魚が放流される前からこの渓には岩魚が存在していたと云う記事を古い雑誌から拾った。渓の名前は書いてなかったが前後の内容から察するにあの渓の名前を思い浮かべるには時間が掛からなかった。それとは別に釣り仲間の四国の渓を数多く釣り歩いて渓の状況に詳しいYさんがその渓で釣った岩魚の鰭を見て「この渓の岩魚は天然じゃ、大事にせにゃあかん」と呟いた。
Yさんが天然を感じた鰭 分かるかな???
本流との合流点に近い小淵、いつもならアタリくらいあってもいいのに無反応、砂地に残る薄い足跡を気にしながら「昨日のものじゃない」と自分に言い聞かせた。次の大淵の真ん中に落としたが反応がない・・・・「今日の釣りは厳しいのか?」と落ち込みの壁際に仕掛けを入れた。小さなアタリがあって無抵抗穂先が反応しているのに魚が動かない「チビ助か?」スーっと仕掛けが横に走ったところで合わせを入れた。岩魚独特の縦引きが楽しい、チビ助と思っていたのに水面に浮かび上がってこない。しばし楽しい引きを楽しんだ後ランディングネットに収めた。メジャーを当てると少し尺に足りないがいきなりの泣き尺だった。その後8寸がつづいた。
次の淵も同じパターン、さっきの泣き尺より引きが強いと思っていたらメジャーを当てると32.5cm、尺越の大物だった。8寸・9寸・10寸、3尾目にしてサイクルヒットのリーチとなった。
今日の相棒は源流テンカラ師の村兆さん、今年は彼と一緒に釣りに行くと調子が良い、今回は前々日に彼一人で行く釣行を強引に割り込み車の便乗させてもらった。尺を釣ったことで源流テンカラ師の釣りに火が点いて遡行ペースが速くなった。彼が本気になれば老いぼれ爺が逆立ちしても追いつけない。「おーい待っちくれーーー」
2尾目の尺岩魚 30.5cm
水量は平水よりチョット少なめか?大物が出る大岩のエグレはエグレ部分が水面から出て期待は薄かった。コイツも落ち込みの壁際で掛けた。岩魚の重みは既に竿の胴に乗っているのに大淵を走り回っる。「メッチャ楽しいネェー」と後ろで見ていた源流テンカラ師に話しかけた。 『シマッタァ』爺に気を使っていただき折角スローペースになっていたのに、また火を点けてしまった。
ここまでボーだった源流テンカラ師が7寸を掛けて一安心、俺にとって最も欲しいサイズはその7寸を釣ってサイクルヒットを完成させておきたいことを知っているのか?「7寸羨ましいでしょう」と聞かれたが「そんなに・・・・」と答えておいた。
一番の難所の渓幅が狭まったゴルジェを越える。雪があれば滑り落ちそうで怖いので少し上にある狭いテラスを足場にして滑り落ちながら着地する大技を駆使するのだが今日は簡単に通過できた。
ゴルジェを越えるとこの渓1番の美しい渓相が広がている。盛期は天然林の緑に覆われこれまた実に素晴らしい景色になる。
3尾目の尺岩魚 30.5cm
コイツの顔は上顎がシャクレれてイカしていた。大物が出るのは二又より上が常、このペースで尺物が出るならあと2尾は軽いだろうと思い『尺物5尾』宣言をしたが最源流部は水量の少ないのが祟ってか?そう甘くはない現実で終わった。
水の流れが一旦ハングした平らな岩に当たり放物線上に落ちる滝、スローシャッターで撮影すると美しい。
つ抜けの岩魚9寸(28cm)
最初の3尾でサイクルヒットのリーチとなっていたが7寸が釣れない、つ抜けしても7寸以下が釣れないってどう云う釣りななんよ・・・・長い釣り人生で経験していないことが起こっている。最源流の二又前の小さな溜まりで漸く7寸が釣れてサイクルヒット完成となった。これが最後の岩魚だったので麻雀で云う海底ツモってところか、あまりに嬉しくて大事にランディングネットに入れようとしたら飛び跳ねて写真に収まらなかった。(信じる者は救われます(笑))
滝を越えたところに幾つか淵があってそこが魚止めだったような記録が残っている。嫌らしいザレ場を越えて最源流部に着地しようとしたが降り口が見つからない。もっと簡単に越えれたような記憶が残っているが記憶違いか・・・・ここで納竿となった。
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YouTube動画 『四国の岩魚』
釣果:11尾、最大:32.5cm、キープなし、遡行距離:12.3cm、標高差:380m
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