源流釣りを長くやっているとタイムアウト寸前でバタバタ釣れはじめたり、釣れるサイズが大きくなったりすることがある。傾き掛けた西日と帰りの時間を相談しながらギリギリまで粘ったとしても魚信は無くならず後ろ髪を引かれる思いで渓を後にする。
何処までアマゴは棲んでいるのだろう?家に帰ってもその思いは納まらない。だったら、はじめから魚止めを目指そうというのが現在のスタイル。
源流を詰めれば詰めるほど水量は減り流れは細くなる。生息環境が厳しいのか?アマゴのサイズは小さくなるのが通常・・・・
魚止めの主はどこに居るのか?
やはり、渓に傾斜が現れある程度の広さと深さを持った淵が必要だ。外敵から身を隠せる場所、大水が出ても身を留められる場所・・・・具体的には滝や大石の裏にエグレがあるような場所じゃないかと思う。釣り人の存在も気になる。源流は渓がコンパクトになるのでポイントが絞りやすい、アマゴが大きくならない内に釣りきられてしまう可能性が高い。「魚止めが下がった」なんて話もよく聞く。釣り人のアプローチが難しかったり、エスケープルートを越えた更に奥、嫌らしい大滝やゴルジェが通行の障害物になっている場所の更に上流などが考えられる。
上記の条件さえ整えば上流から流れてくる餌を独占できるので魚止めの主が釣れる可能性は思っているより高いのかも知れない。
魚止の主
主と呼ばれるからには尺を越えているのが理想だけど源流の最上位置にあって厳しい環境を生きてきた個体なら、顎が曲り・背ぱり・尻鰭の膨らみや長い年月に刻まれた複雑な体の模様などの特徴を持っているなら尺に足りなくても魚止めの主と呼んでもいい。
源流で出合った魚止めの主達
小さな支流をを過ぎる毎に水量が少なくなる。1mに満たない深みを幾つか越えれば渓は緩く浅いザラ瀬が続きアマゴの気配は感じられない・・・・もはやこれまでかと思いエスケープ道に這い上がれば帰還できる。しかし、地図の等高線はまだまだ谷の形になっているのでザラ瀬を進めば落ち込みの下に良淵が現れる。落ち込みは岩と岩が重なり合った間に流れ落ち岩の奥にエグレがある。淵の真ん中の様子を伺ってから本命のエグレに仕掛けを入れた瞬間に竿が持って行かれた。
尺1寸を越える主だった。
落ち込みの上流は傾斜が現れ、再び渓の流れが復活する。尺1寸が出た淵より深く広い淵や落ち込みより立派な淵があるのにアマゴは棲んでいない。何故、この落ち込みの淵が魚止なのか?主が棲んでいるのか分からない。
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短い支流の割に魚影が濃いから本流を釣り上がる前に必ず竿を出すことに決めている。1時間ほど釣り上がれば支流で最も大きい淵が魚止だった。それより上流の大滝を越えれば素晴らしい渓相をしているのにアマゴが釣れたことはない。
その日は水量が多いことを良いことに大滝まで釣り上がってみようと思った。大滝には滝壺がない滝下から大石が重なり合った緩い連瀑になっているが連瀑の始まりにチョットした深みがあるだけなので釣りの魅力に欠けると思っていた。
落ち込み白泡の中に仕掛けを入れると一発で喰いついた。先に6寸ぐらいのが横に走ったがコイツの重みじゃない・・・・回り込んで角度を変えて見ると落ち込みの手前に配置された大岩のエグレで主がクネクネしていた。
下から登ってきたのか?上から落ちてきたのか?
滝上を再釣査したのは云うまでもないがアマゴは居なかった。
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滝を幾つか越えると直ぐ横に登山道が見えはじめ渓を渡り尾根の上に遠ざかってしまい渓沿いの道はなくなる。2時間近く歩かなければ車止めまで辿り着けないので源流に足を踏み入れる釣り人であってもここで納竿する。しばらくはチビアマゴしか釣れないがだんだんサイズアップして向かえるのが魚止の滝、左が大岩で右は水に底岩が沈みその間に細く深い溝を配置している。滝の落ち込みに仕掛けを沈め溝を通すと左の大岩のエグレから主が姿を現し餌に食らいついた。
滝上は連瀑になっているがアマゴが居着けるような深みはない。連瀑をやり過ごしたら3連続の良淵にアマゴの反応はなく渓が分かれて水量が消える。
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度重なる水害で源流部が崩落した渓にアマゴが戻ってきた。こんな奥地に誰かが放流するとも思えない。だったら支流から落ちてきたのか?釣査することになった。
支流の入り口も荒れていたが崩落現場を越えると素晴らしい渓相の源流が待っていた。針掛かりするアマゴは何処か懐かしい感じがするシンプルな昔アマゴ、崩落の影響により人との関わりが少ないことで時間の流れが止まっているような渓が現在も存在していることが嬉しかった。
渓は短く1時間少々で魚止めを向かえ2m程の落ち込みと畳3畳に満たない淵から泣き尺が姿を現した。尺には届かないが幅広の存在感は魚止めの主と呼んでも差し支えないだろう。
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水量が減り50cm程の落ち込みから渓幅一杯に広がった浅淵が納竿場所だ。水がない谷筋の木に目立つように巻き付けた赤テープが車道への登り口を示している。雨は止んだがピーク付近はまだ降っているのかいつもは細い水の流れが倍以上の幅になっていた。
「何処までアマゴが居るのか確かめてみよう。」と上流に向かい歩き始めた。
チョットした深みがあればチビアマゴが走る。水の流れが途切れるようになっても同じ状況だった。
渕尻で遊んでいたアマゴが大岩の落ち込みに隠れた。たぶん、上の写真がこの谷の魚止めだろうと思われる。ピークから標高差200mに満たない場所、こんな水量の少ない場所でも生きていけるのか?源流アマゴの生命力の強さを感じずにはいられなかった。
短い谷筋から稜線に出てピークを踏んでから車止めまで下った。ピーク付近の植生は豊かでこの地域の降水量の多さを考慮するなら魚止の小さな淵の水が涸れることはないだろう。もしかしたら、さっきのチビアマゴが魚止めの主になるかも知れないと想像したら『魚止』はロマンある場所で『魚止めの主』は夢の魚になる。
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