ここ数年、渓流釣りのオフシーズンはオフトレと称して四国の山歩きをしている。頂上からの眺望や長い道のりをピークまで辿り着いた達成感もさることなながら、源流通いの脚力維持と稜線から源流を見ることを主たる目的にしている。
稜線から源流を見ると主尾根はピークから別れ、主渓はピーク間のコルからはじまる。冠となる山が高いと主尾根で囲まれる範囲が広く雨を受ける流域面積が多くなり渓の規模が大きい。また、森林限界が近いため植林効率が悪い理由でブナの原生林が残っていることが多い。
登山道の途中や稜線でブナ林に出合うと嬉しくなる。更に、それが渓筋を下り源流域まで続いていたなら来シーズンは絶対入渓しようと決める。俺の山歩きはブナ林を見つけるためでもある。
ブナの原生林が残っている渓なら雨や雪解け水が一気に流れ落ちることはなく、堆積した落ち葉や張り廻らされた根に蓄えられた水分はジワジワと地中を下り渓筋に集められる。例え長い渇水に見舞われたとしても、原生林の渓は水が涸れることはない。『ブナ林は天然のダム』と云われる由縁である。ブナの原生林に守られた水は渓魚を育んで種沢として役目を持っている。
源流域が豊かであれば渓魚の循環が下流へと続き渓流域も豊になる。樹の間隔が広くで明るい渓になっているので気持ち良く竿を振ることができる。原生林の源流で釣りができる・・・・渓師にとって至福の一時になる。
ただ、渓魚の循環を途切れさすような釣りをする不心得者が入る場所ではない。大自然の営みであっても限界はあるのだ。
登山道はブナ林の緩尾根を下る。
ブナ林の渓
ブナの原生林は林は稜線から渓筋まで続いていた。何年か前に源流を詰めた渓、水線を越え水が切れる手前までアマゴが居たことも頷ける。
下流は植林された山の斜面が崩れ酷いことになっていた。同じゲリラ豪雨が降ったとしても地中に広がっる根のパワーが違い過ぎる。
雨が降る度に濁りが入る渓
ピーク付近で大崩落が起きていた。渓筋は自然林なのに水量が安定しない渓・・・・最源流からピークまで植林だった。最近、どうも釣れなくなった渓・・・・一尾根丸ごとの大伐採がはじまっていた。源流まで釣り上がるとピッタと釣れなくなる渓・・・・渓の上の方に車道が伸びていた。
渓を釣り上がるだけじゃ分からないことも稜線から渓を見下ろせば全体像が見えてくる。渓流釣りのオフシーズン時期なら植林と原生林の境界がハッキリする。山歩きは山だけ、渓流釣りは渓だけじゃなくって山と渓はつながっていることを知る。
結構シンドイ山歩きだけど渓流釣り・源流釣りにとって得るものは大きい。
発展途上の自然林
燃料として木が切り倒され、その後煙害で荒れ放題になった斜面、漸く若い雑林帯が形成されようとしている。植林は下の方で止まっているから100年もすればいい原生林になるだろう。
俺の時代じゃ無理だけど、山が復活し源流域をアマゴが泳ぐ姿を想像するだけで楽しい。
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