源流釣り入門
源流は渓流域で感じる風景より遙かに濃い自然に魅力を覚え、釣れる渓魚は野性味に溢れ凜々しさの中に美しさを纏っています。 美しい風景に囲まれながら美しい渓魚を求め自然の中を彷徨うのが源流釣りです。
遡行距離が長い、携帯電波が届かない、危険箇所が多い、道に迷ったらどうするのか・・・・人里離れた源流域は人里に近い渓流域より釣りとしてのハードルが高くなりますが、釣果より無事帰還を目標に安全第一で行動すれば難しそうに見えた源流釣りの世界が近くなります。
このページでは入渓から撤退まで順を追って源流の歩き方について書きました。
車止め
大雨後で落石だらけだった林道を避け広場に車を止めました。
林道の終点が源流の入渓ルートになっている場合が多いので歩く距離を少なくするにはできるだけ最終地点まで車を乗り入れたい気持ちはありますが整備された道は少なくダートが当たり前、Uターンできる広い場所も限られているのでいきなり土砂崩れの現場が現れ細く曲がりくねった道を永遠とバックで引き返したことが何度もあるのでホドホドのところに車を置いた方がいいでしょう。
車を止める場所は山側の斜面を避けた方が落石に遭う確率が低くなります。
源流釣りは先着優先です。
川幅が狭く釣るポイントが限られた源流では後から来て先行者の上流に入る行為は悪質なマナー違反になります。
川幅が狭く釣るポイントが限られた源流では後から来て先行者の上流に入る行為は悪質なマナー違反になります。
釣り人同士の無用なトラブルに巻き込まれないためにも入渓場所に車が止まっていたら別の谷に渓変わりした方が無難です。
アプローチ道
昔は立派な道が付いていたのにザレてしまいました。
源流に向かう道は谷側が急斜面になっている場所が多々あります。足を踏み外したり、足を置いた法面が崩れたり・・・・滑落すれば無事では済まないので少々バランスを崩しても身体の重心を山側に残せるように意識して下さい。
危険な場所が現れたら立木を握ったり岩の突起に手を置いたり支えになるものを探します。
ザレ場・ガレ場
足跡が三叉、猪が通った後を参考にしました。
斜面が崩れ道が途切れている場所は足場が悪くなっているので高巻きするか?一旦渓まで下るのか?慎重な判断が必要です。通過する場合でも足切りと云って地面を踏み固めながら一歩一歩ゆっくり進みます。
このときは猪の踏み跡があったのでトレースしました。意外と当をえたルート取りでした。
下降
緩い尾根を下るのが安全です。
急斜面であっても立木が生えていれば滑落のリスクが低下します。
最後の降り際が切り立った崖になっている場所があります。もう少しなのにウロウロしながら下降点を探すシーンはよくあります。10m程の短いロープを持っていれば太い木に二つ折りで掛けスルスルーと安全に降りることができます。
渓の歩き方
浮き石を踏まないように歩きます。
できるだけ安定した岩の上を歩きます。地面から露出した石は浮き石になっている場合があるので少しでもグラつきを感じたら全体重を掛けないようにして下さい。挫いた足で源流は歩けません。
靴底はフェルトがいいと思います。最近フェルトにスパイクを埋め込んだ靴底が幅を効かしています。最初の内はフェルトとのバランスが良くて斜面を登るのも滑らなくて最強のアイテムなのですが経年変化でフェルトが縮んでくると滑りやすくなります。
特に固くて表面がツルツルした石は滑ったら止まらなくなるので注意が必要です。
徒渉
本流の強い流れ 石を支えに徒渉しました。
左右どちらの岸を歩くのか?
障害物や深淵によって幾度も渓の徒渉を繰り返しながらの遡行になります。浅瀬や緩い水の流れは問題になりませんが勢いのある水の流れがあるときは上流に向かって足を運ばないと水の流れに重心を取られて転倒することがあります。また、増水で水が濁り水深が分からない流れは徒渉を控えるべきです。
好ポイントを前にして釣る立ち位置を決める場合、徒渉する位置が重要になります。渓魚は水の流れの異常に敏感で警戒心が強まり折角の好ポイントを潰してしまいます。できるだけ遠く、段差で隔たれた下を徒渉すれば好釣果につながると思います。
高巻き
最短より安全なルート取りを選択します。
谷筋が通行不能になれば岸側の斜面を高巻くことになります。高巻くルートを間違えるとどんどん危険な方向に導かれることがあります。
高巻く前にそのルートは合っているのか冷静に判断して下さい。
滝を高巻く
標高差50mの高巻き 左に尾根ルートが付いています。
滝を越えるには高巻くしか方法がありません。右か?左か?ヒントは赤テープや鉈目、踏み跡を探すことです。滝壁で取り付き不能の滝でも過去に人が通った気配がある渓なら手前に巻き道があるはずです。
釣っているときは竿先に集中しなければなりませんが、それ以外は渓の状況に五感を研ぎ澄まし次の行動をするための情報を得ることが大事になります。
道を見つける
渓が二又に分かれれば山道は真ん中の尾根を通っていることが多いので渓と交差する道が見つけ安いポイントになります。そして、渓と交差する道があれば左右どちらに上っているのかを覚えておけばどちらの斜面に取り付けばいいのか判断できます。
取り付けるような斜面が無くても『そこまで戻れば道がある』安心感に繋がると思います。
魚止め付近の原生林
谷筋の左に踏み跡が見えます。
原生林は巨木が立林して樹木の密集度が疎らになり人が歩いた踏み跡があれば目に入りやすくなります。滅多に人が入ることがない源流なのに踏み跡があるのは、過去に人の営みと関係していたとするならば下界に続いていることは間違えありません。しかし、踏み跡が薄く直ぐに見失ってしまいます。
過去の経験に照らし合わせた想像力を最大限に働かせながら続きの道に復帰することを繰り返していれば明確な林道が現れます。
撤収
登山道まで出れば安心感があります。
渓を下るのは上るより遙かに危険です。撤収ルートは登山道や尾根道を使います。
国土地理院の地形図にかかれている点線道は比較的広く安心できる道です。事前に釣行計画に組み入れ谷筋に近い斜面や緩い斜面があれば登るのがシンドイかも知れませんが下る方向が定まっているので不明確な谷筋の道より撤退時間が短くなります。
ヘッドランプ
源流は早仕舞いが基本です。
しかし、予期せぬことが原因で帰り道が暗くなることもあるのでヘッドランプは必需品です。充電池は長い時間が経てば自然放電していざという時に使い物にならないことがあるのでヘッドランプの電池はアルカリ電池一択です。
予備電池は必ず準備してください。
スマホGPSと地形図
地図の読み方については『地図を読む』で解説していますので参考にして下さい。
携帯電話の電波は届かなくてもGPSの電波は渓の中でも拾えます。
道案内が無い源流で最も重要なことは自身の居る場所が何処なのかを知ることです。居場所が分かれば今後進むべきルートが明確になります。また、歩いてきた軌跡を残していればそれを辿って引き返すこともできます。
スマホの中に源流で役に立つGPS地図アプリを入れておくことをお薦めします。
スマホがイマイチ信用できない方は国土地理院の1/25000地形図や登山地図と併用するといいでしょう。
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