最悪のエスケープルート

渓の回想録
渓の回想録
 東予水系 W谷  1998/2/1 

最近、2月の解禁はこの渓で迎えている。
この年は解禁日が日曜日、早朝、渓への林道が凍りつくと大変なので前日の夕方までに車止めに着き解禁日を待つことにした。(解禁日を待ちきれなかったたかさんと二人)5時過ぎ車止めに到着して野営の準備にとりかかる。野営で最も大事なものは焚き火である。焚き火さえあれば、暗黒につつまれた渓の中で奇妙な動物の鳴き声がしても平静でいられる。

この日のメインディッシュは寄せ鍋、焚き火の世話をしながら、今年の釣りのこと、渓のこと、アマゴのことなどを語り、また、酒の量が増えていく。たっぷりと出汁がでた鍋にうどんを入れて仕上げるのが讃岐人の掟・・・・・

12時過ぎに、御神酒を川に流して今年一年の無事を祈り解禁の儀式終了。

早めに深い眠りの中へ

我々の野営のスタイルは、だいたいはこんな感じ、小さな木を集めて火種を作る。火を付けるには杉の葉が有効、火が安定すれば大きな丸太を何本か入れる。後は、丸太の炭を落としながら徐々に燃やしていく、こまめに世話をするのが大事、残った小枝は焚き火の横で乾かすと朝が楽である。朝、置き火に小枝をのせてパチパチと火が付けば一流 
たかさんは焚き火の名人である。
解禁日の谷へ
朝起きると雪が降っていた。日曜日の解禁だというのに誰も上がってこない。とりあえず前日にのりこむという作戦は大成功であった。(少々帰りは心配であるが)
雪のために置き火はすっかり消えていた。コンロでカップラーメンを作り体を温め、準備を整え解禁の渓へ
釣り上げるとサビが出てくる8寸 2月の解禁は少し早すぎると思うのだが・・・これ位の魚体になってくると、しばらく魚信を忘れサビ付いた腕の釣り人にとってはなかなかの引きである。
この渓の水は、透明度が高い。林道工事が進んでいて尾根付近まで延びてきている。願わくば現在の工事で終わりにして欲しいのだが・・・・・・・上のアマゴは白泡の中から出てきた。
納竿⇒撤退

次第に雪が深くなってきて、いつもの滝下で納竿、さて帰り道だが、雪の中を相当無理をして遡行をしてきたため、渓通しに帰るのはかえって危険と判断した。地図で確認すると右斜面に一つ上の支流との間に細尾根があり尾根の付け根から本流に向かって登山道が下っている。

「尾根は細いからすぐにわかるはずだ。 1時間少々もあれば登りきるんじゃない」
「今後のこともあるし、この斜面を登れば上流の様子もわかるしね」
こんな会話で簡単に右斜面をエスケープルートにして登り始めた。

尾根の頂上まで約300m、頂上付近には植林帯が見えている。植林帯に入れば何とかなるはずだ。順調に斜面を登り始めたが下から見たよりも実際の斜度はキツイようだ。おまけに植林帯に向かって斜めにルートを取ろうとしていたが下から見えなかった小さな渓筋が岩盤帯になっているので回り込むことができない。

どうやら正面突破しかルートは無いようだ。

30分で50m、予定の1時間を経過しても半分も登ることができない。斜度がキツイため木につかまり腕力だけが頼りの登りとなる。10m程登っては5分休憩を繰り返した。
やがて、尾根の頂上付近、斜度は緩くなったが雪が深くなった。雪の吹き溜まりである.股下まで雪に埋まりながら雪を掻き分けて前進あるのみ。

「こんなに雪が深くて、尾根筋がわかるだろうか?」 少々不安が頭の中をよぎる。

尾根の頂上は風が強いためが積雪は少なくなった。それでも膝下程度はあった。何処が尾根筋だろうか?こたえは簡単に見つかった。ハンターが犬を連れて歩いた足跡が尾根の付け根に向かっている。

我々は、雪の中に倒れこんで目的地にたどり着けたことを喜んだ。標高差300m、3時間のキツイ登り、運動不足の手足はパンパンだった。尾根筋から登山道を無事発見、車止めまで1時間、疲れた足を引きずりながら下り始めた。

振り返ってみれば・・・・

帰宅して撤退ルートをカシミールで計算してみると平均斜度が35度以上あった。この数値を初めから解っていればこんな最悪のエスケープルートは登らない。上の写真は、2000年度釣行の際に左斜面から右斜面を撮影したもの(左斜面には立派な林道がありました。)


 

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