ルート開拓⑬ 大好きな渓

源流釣りルート開拓
源流釣り入門
  源流釣りルート開拓   
渓流釣りにのめり込んでいった頃、支流に入っても本筋の大淵に魅力を感じていた。
取水の存在が頭から離れない、釣れる・釣れないの境界線はここにあると思い込んでいた。出合の広場に車を止め電力取水の点検道を3、40分歩いてからの釣りはじめる。
大淵を攻めるのは時間がかかるので遡行距離は伸びず渓の半ばで納竿することが多かった。それでも、他の渓で釣るより型や数が良かったので上流は気にならなかった。気にならなかったと云うよりも上流を目指せば歩く距離が長くなり帰りが大変になる・・・・と思っていた。

あるとき、本筋に流れ込む滝壺で釣ったアマゴを見て考えた。
このアマゴは本筋から上って来たものなのか?それとも滝上から落ちて来たものなのか? 滝の側面に取り付き15m程登ると滝はクリアーしたが更に傾斜の急な岩場が続いていた。 なんとか岩場をやり過ごした先には如何にも釣れそうな良淵が続いているではないか・・・・
早速、仕掛けを入れると8寸9寸が淵毎に釣れ凄いことになってきた。そんなに大きい支流じゃないから1時間ほどで夢のような時間は終わった。スリムな魚体やパーマークの特徴から滝壺で釣ったアマゴは支流のアマゴに似ていた。
 

そうなれば、もう1つ上の支流はどうなんだろうってことになる。
しかし、遡行距離は長くなるばかりで陽が暮れるまでに帰って来られる自信はなかった。
渓の上に通行止めの林道が通っていることは知っていた。登山地図を見ると通行止めの林道から渓に向かって登山道が延びているではないか・・・・通行止めの山道を2時間弱歩き1本目の支流に目見当を付けて大下降、支流2本と源流部を釣って登山道を登り返す、林道に出てさえいれば暗くなってもヘットランプを灯せば車止めまで帰って来られるだろうと大まかな計画を立てた。
大降下の斜面は地図で見るより急だった。
下れると判断したのは対岸の急斜面と比較して緩そうに思えた相対感だけだったかも知れない。地図と現場が一致しないミス、等高線の詰み具合と身体に感じる傾斜感覚を一致させるには常に地形図を見ながら数をこなし慣れるしかないのだ。それでも立木に掴まったり横移動しながら転がり落ちるのを避け30分で渓底に立った。
1本目の支流には上流に向かい細い道が付いていたので危険な滝を下ることなく2本目の支流に近付けた。2本目の支流の正面に帰りの登山道が付いていた。その性なのか1本目の支流みたいに爆釣モードにはならなかったがソコソコの釣果はあった。 支流2本と源流の二又まで釣り上がった。二又の上流も気になったが登山道まで引き返し急斜面を登り返してトボトボと長い林道を下っている自身の姿が簡単に想像できたので、奥に足を踏み入れるのは止めた。
それから、3年くらい経ってから源流の二又を詰めてみようと思った。
林道の終点まで2時間強・標高差400mの林道歩きはやっぱりキツい。支流2本と二又2本、下流とは全く違う凜々しくてカッコイイ源流アマゴに出逢うことができた。
それにしても深い森、渓の斜面に巨木が立ち並ぶ、人が滅多に来ることがない原生林、登山道の入り口に『熊注意』の立て札があったが怖さより気持ちよさが勝っていた。
源流釣りの世界に入り込むきっかけになった渓に感謝しかない。

源流を詰め随分な標高まで上がってきた。

何れ登るのに下らなければならないのはロスでしかない。現在位置を確認すると林道の終点とほぼ同じ標高、「このまま平行移動したら・・・・」
途中、ややこしそうな谷筋が跨がっているけど、そこさえ何となれば斜面の傾斜は緩い。もし、失敗したとしても何処かで縦の登山道と交差するから山中を彷徨うなんての心配はない。実際は、巨木の原生林は樹々の間隔が広く歩き安い30分で林道の終点と合流した。
楽する為に知恵を絞るのは得意なんだから。

その後、 大好きだった原生林の渓は大災害に見舞われた。
崩落したのは1本目、土砂が押し寄せ谷の両サイドには数メートルの土砂が堆積した。それを喰い止めるためなのか巨大な砂防エンテが幾つも建ち並び中流の大淵はその下に消えた。
源流域も無事ではいられず押し寄せてきた大きなガレの河原と化した。
それでも生命を繫いでいる源流アマゴ、渓の将来は必ずしも暗くない。
 

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