頭ハネについて

源流釣り入門
源流釣り入門
源流釣りに於いて、先行者が入渓していることを知りながら、後から来てその上流に釣りに入ることを『頭ハネ』と云い戒められる行為です。
狭い源流で『頭ハネ』された先行者が釣れなくなるのは必至でその日の釣りはほぼ終了となります。
知らなかったとしても結果は同じなので気まずい揉め事を起こさないためにも先行者の有無の確認は重要です。 
長い間、源流釣りをしていると『頭ハネ』されたり、『頭ハネ』が疑わしい経験が多々ある。

No1 最悪の頭ハネ

たかさんと車止めで明るくなるのを待っていた。

朝方2台の車が続いて来て、なんか揉めている。
「先に来た方に渓の優先権があるのを知っているなぁ」
「・・・・」
「やったら、帰れ!」
と後から来た車のおじさんを怒鳴りはじめた。
釣りに入る準備をしだしたので、俺達が先に来ているからこの渓の優先権があると言いに行った。
「ここは、オマエだけの谷か。」
「先に来ているなら、先に釣りに入ってもかまわないが石が落ちてきても知らんで・・・・」
さっき、あんたらが言っていたことと全く違うじゃん。
更に、「今日は頭にきているから刺すかも知れんぞ」

と脅迫めいた訳の分からないことを言いだし全く話にならない。

こんな輩には負けるわけにはいかない。
「先に行きます」
と告げて渓の入り口に向かい林道を下りはじめたがその輩達は後から付いてきた・・・・
3つ目の淵までは何も起こらなかったが、4つ目の淵を釣っていると道が付いている反対側の急斜面を輩が巻きはじめた。
「ドボーン」と淵に水柱が上がった。
偶然なのか?業となのか?分からないが、本当に石を落としてきやがった。
これから何をされるか分からない・・・・たかさんと相談して渓変わりすることにした。
若気の至りの行動だったが、ルール、協調性、正義感が通じない輩には関わらないのが1番だ。

No2 すまんなぁ

水量は抜群、渓相も抜群なのだが、なかなかアタリがでなくなった。

「師匠、釣れませんね・・・・」
「これから、上流の二又を越えると大滝があってそれを越えたら9寸がバンバン釣れだすから、心配ないよ」
「9寸がバンバンね。OKOK」
林道と渓が交差する上で、よぼよぼの爺さんが釣りをしていた。
『頭ハネ?』っと思ったが、
よぼ爺さんじゃ大滝を越えるのは無理だと思い。滝上から釣る旨を師匠が伝えに行くと若い衆と一緒に釣りに来ていて、若い衆は上流に行ったそうである。
「すまんなぁ・・・・・」
すまんっと思うのだったら、初めから頭ハネなんかしなければいいのに・・・・・
だいたい、こんな時間から来て人を抜いて上流から釣ろうなんてのはどういう神経をしているのだろうか?


No3 渓変わりして尺上2尾

5時半、林道を登りはじめた。

朝の涼しいうちなら楽ちんかなと思っていたが登り初めてすぐ汗が噴き出してきて標高差200mの登りはムチャクチャしんどかった。

古いエンテ・・・・無反応

「いつもやったら9寸か8寸が出る場所なのにおかしいな?」と師匠がこぼす。
エンテを巻いている途中に気になる足跡・・・・そして、エンテ上の砂地にどう見ても今日のモノだと思える足跡がスッポリと残り、石の上には生々しく濡れた足跡、『頭ハネ』されたと言うことは決定的である。
まだ、近くに居るはずだ。
「追いかけていって説教してやろうか」とオレ
「もめるだけや、渓を譲ってもらったとしても面白くないから渓変わろう。」と師匠・・・・大人やね
楽しみにしていた魚止めの確認がなくなり、林道まで標高差50mを言葉少なく登った。
登りきると登山者二人に出合う。
登山者の一人は渓流釣りをするそうで『頭ハネ』の愚痴を親身に聞いてくれた。
源流釣りは超自然が相手、山容を読み、渓に親しみ、釣れた渓魚の美しさに感動する。
大自然を敬うことからはじまる遊びだ。自然は優しいが怖いことだって沢山ある。
もし、何かしらのトラブルがあっても平地のようにはいかない。他人の助けが必要なことだってあるだろう。
キツイ林道を登ってきたのなら『頭ハネ』すれば先に入った釣人がどうなるかは、同じ釣人なら簡単にわかるはずだ。
自身が釣ることしか考えられず他人のことを思いやれないような釣人は源流に入る資格はないと思うし、源流に入って欲しくない。
人間ができていない俺はミミズの箱裏に「何を考えているんや」と書きワイパーに挟んで車止めを後にした。
『頭ハネ』した釣り人はHPにリンク依頼のあった管理人の知り合いだったようで謝罪メールが届いた。
内容は「あの谷に大物が居る噂を聞き他人に釣られる前に釣りたい思いを抑えきれなかった。」
大体はこれなのよね、これをどう抑えられるかが渓師の価値だと思う。
その後、高知飲み会で一緒になり、何度も平謝りしてくれた。
俺はいいのよ。渓変わりした谷で尺を2尾釣らせてもらったから、もう『頭ハネ』は気にしていない。
帰り道で捻った足がまだ痛いと云っていた師匠様のご機嫌を取った方がいいよとアドバイスした。

No4 神戸ナンバー

相棒に聞いた『頭ハネ』の話

ここからだというのにアタリが止まり変だなぁと思っているとチョット先に二人の釣り人が居た。
話を聞くと神戸から釣りに来たようで、入渓路が分からず急斜面を下り渓まで降りてきたと云う。
相棒は上の車道から降りたのなら登るのは大変だし、折角神戸から釣りに来ているのだからと渓を譲った。
渓を引き返し車止めまで戻ると、釣友の車の後ろに神戸ナンバーの車が止まっていた。
同じルートを通って渓に入ったなら釣っている相棒達に気づかない筈はない。

ここで初めて『頭ハネ』されたことを理解した。

よく考えてみれば
神戸から愛媛まで釣り来るのならもっと有名筋を釣りたいと思うし、こんなマイナーな渓には入らない。
神戸ナンバーを言い訳に使った『頭ハネ』の常習犯かも知れないと勘ぐってもいいだろう。
優しい相棒の親切心が徒になってしまったね。

No5 自白親爺

釣りが終わった帰り道の橋上から見える絶好の大淵

「あの大淵、実績あるから釣りに行く?」って師匠に誘われたけど足がボロボロだった俺は
「上で待っているわ」と答えた。
橋上から師匠が釣っている姿を見ていると車が止まり見知らぬ親爺が近寄ってきた。
「俺が朝やったから、あの淵釣れへんわ・・・・」
「へぇ、そうなんや。」
しばらく沈黙が続いた後、親爺が話をきりだした。
「絶好の淵なのに、なんで釣れのやと思ったことはないか?」
「そりゃ、あるわなぁ」
「俺は、そう云う淵を専門で釣っている、林道から入って良い淵だけを釣るんや」
「谷に釣り人が入ってたらどうするの?」
「そんなん関係ないわ。釣り人が居たら隠れるし、見つかったら逃げればいい」
頼みもしないのに携帯の写真を見せてくれたけど、大したアマゴは居なかった。
何を自慢したいのかよく分からない『頭ハネ確信犯』の親爺だった。
口には出さなかったけど『さもしい釣り』だなぁと思い軽蔑しかなかった。


No6 逆パターン

源流の車止めに車を止めた。

朝起きたときから身体の調子が悪かったので1時間以上寝てから林道を下りはじめた。
30分くらい釣り上がり支流の分岐で休憩していると下流からルアーマンがやってきた。
「えっ!」です。
5時半から釣りはじめたとしても3km弱を3時間・・・・ムチャクチャ早いじゃないの
車止めで、もう少しゆっくりしていたら渓の優先権は彼のものでした。
しばらく話し込んでいたのですが、なかなかの好青年でした。
潔く、「引き返します。」って言うので
「折角ここまで上がってきたのだから、本流なら釣ってもいいよ」と薦めてみました。
この水量、ルアーだったら大場所しか狙わなし、水の中に立ち込まないから支流を釣ったあとで追いかけても問題ないとの読みがあった。
テンカラの後を釣って、寧ろ活性が上がっていることもあるくらいだからね。
「じゃ、しばらく林道を歩いて行って本流の二又左を釣ってもいいですか」と遠慮深かった。
支流と本流を釣り二又までやって来た。
左又には約束通りケルンを置いてあったので、ルアーマンはここからはじめたのだと思う。
さて、彼の釣った後で釣れるかどうか?試してみました。
いきなり9寸が掛かりました。
取り敢えず読みは正しかった・・・・本流も遠慮することはなかったのにねぇ
ルアーの結果がどうだったのか?気になるところです。
後日、ルアーマンからメールを頂き彼の釣果もなかなかだったようです。
入渓地点が3km離れていたので我々の行為は『頭ハネ』じゃないと思います。
しかし、ルアーマンの立場からすれば釣りたいと思っていた源流に我々が居たってことになる。
『頭ハネ』には、開ける距離がどうのこうのって話はありますが現実は想定外のことが起り得ます。
双方に悪意がないのであれば、相手の立場に立った谷割りの話ができると思います。

No7 番外編 沢登ラー

源流釣りと沢登りは敵対関係にある。

沢登りはチョット文句を言われるだけで、割を喰うのは源流釣りだから『天敵的存在』なのだ。
だいたい、游漁料を払っているのだから渓の優先権はこっちにある筈なのに、後から入り追い抜かれた後は全く釣りにならなくなる不条理を何度も経験している。
渓流釣りの世界ではこれを『頭ハネ』と言って、最低限のルールも守れない釣り人と避難される行為だ。
ソロソロ大物が釣れはじめそうな予感していた。
人の声が聞こえたような気がして振り返った。
「・・・・・・・・・・。」 
男女5人の沢登りパーティーがめんどいヤツ合ってしまったような顔をしている。
取り敢えず話を聞いてみる。
二又から右支流に入ると云う・・・・こっちに選択権はないらしい。
スマホの地図を見せながら現在位置はここで二又はここだから、右支流に入るなら二又までの短い区間は水に入らないことで交渉を成立させた。
下から見ていると1つ上の滝上で留まっている時間が長い。
二又までの巻き道は横に通っているはずなのになんか嫌な予感しかしない。
滝下まで来ると岩の上に水の付いた足跡がベタベタだった。
次の滝も同じ・・・・さっきの約束は何だったのか?
距離にして5、60mの区間も我慢できない自己中の沢登り集団のようだ
それとも、沢登りの世界では『水に入らない』と言う意味がちがっているのか?
そお~と忍んで釣るのが源流釣り
大勢の輩が歩き回った水の流れでは釣れるはずもなく撤収するしか選択肢はなかった。
『沢登り』とは相まみれない・・・・出合わないことを願うことしかできない。
しかし、なんでこんな緩い渓で沢登りなんだ(怒)

頭ハネの対策
  1. 車道が近くに通っている谷は避ける。
  2. 夜明け前、車止めに1番乗りする。
  3. 車止めから1時間以上歩いて入渓する。
    上に行っても無駄なことを気づかせる。
  4. それでもハネられたら
    早い時期なら渓変わりか支流転身を考える。
    狙うポイントを竿抜けに絞り魚の出方を見る。
  5. 谷で頭ハネの輩にあったら
    遠巻きに睨み付ければ、相手は状況を察して引き下がる。
    それでもダメなら、遡行記のネタにされるでしょう。

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