平川で尺2本 高知東部水系

渓流釣り遡行記2004
渓流釣り遡行記2004  2004/8/28
  高知東部水系  439道中記
台風の上陸と接近が相次ぎ、四国各地の川は大きな痛手を受けているとの情報が入ってきていた。 四国の雨量データを調べてみると、釣りができそうな川は高知県東部ぐらいと思えた、朝早く出発したものの、例によって遡行する谷をハッキリ決めずにR55を東へと車を走らす。
予報では、昼からまとまった雨が県東部に降るとのことだったが、フロントガラスには既に雨粒が落ちてきている、長時間雨に打たれながらの単独釣行はちょっと厳しい、知らない谷で撤退ルートを発見できなかったら・・・焦るよな。
大物が出そうで、短く、帰り道がある谷」と言えば・・・ふと地元の老釣師の話を思い出した、「・・・○×△のTN谷で釣ったことあるかよ?・・・なけりゃーいっぺん行ってみいや、面白いかもしれんぞ・・・帰る道?・・・左にあるけんど判りにくかったら谷通しがええ」、最近は専らチャラ瀬専門で釣っているという老釣師の視点は、遠く懐かしい渓の記憶を追っているように伺えた。
TN谷川
車留めに到着したとき雨は本降りになった、このまま降り続いても2,3時間は釣りになるだろうと入渓準備を終えた、地形図で確認すると中流からはかなり厳しい渓のようで等高線が込んでいる、850mの水線終いの林道終点までは高低差400mで4時間といったところか、雨が激しくなってきたら潔く撤退しようと決めて下降を始めた。
一度左支流のTS谷を渡渉し二股の尾根を越えてTN谷へ入渓した、渓は川原状態で砂利の浅瀬が暫く続いた、両サイドは営林署の山を一度伐採した後、植え付けて20年といったところか、渓に傾斜がでてくるとゴーロ場に変わり良いポイントが前方に現れた、4.5mの竿に08の仕掛けをセットして手前のポイントを探ると一発で5寸がヒットした、どうやらあめごは居るようだ。
TS谷渡渉点から(前方左奥がTN谷)
細長の4畳渕に餌を流し込むと、ラインが止まった、慌てて合わしてしまったが竿は大きく曲がる、竿を立てると流れに乗って魚体がゆらりと浮いてきたが、すぐに大岩の向こうに引き込まれた、「しまった、でかいやんか!」と、慌てて引き抜こうとしたのが大失敗、08がプツンと切れてしまった、逃げた魚は大きい「尺あったかも!(TT)」、それにしても脆い08、ビシを付けたあたりから切れていた。
釣り始めからこれだったら凄いことになるかもと、先を急いだ釣りになってしまった、木の枝が倒れ込んだ3畳渕で9寸がヒットしたが、ラインが小枝に絡み、またもや08のラインが切れてしまった、「ちょっと一服して落ち着こう・・・」雨のあたらない桧の枝の下でタバコに火を付けた。
よくよく思い出してみるとこの08はかなり古い、5年以上経っているかもしれない、それで脆いのだろう、残ったラインを両手で引っ張ってみると簡単に切れてしまった。
仕掛けを、買ったばかりの06の通しに変更して釣り上がって行くと暗いが水深のある6畳渕に出合った、とても暗い渕だが暫く粘り、9寸8寸7寸と連続でヒットさせた。

暗い6畳渕、此処からが核心部

9寸(27cm)

ここからは険悪な渓相が見上げるように続いている、いつしか両サイドは天然林に変わり渓らしくなってきている。

撤退するのか?このまま釣り上がるのか?かなり迷ったが、雨は小降りに変わり谷水は笹濁り状態を維持している、次に大場所でもあれば・・・たぶん・・・と、すけべ心丸出しで右から巻き上がって下降した、しかしそこからは連漠帯でポイントが全く無く、岩を幾つもよじ登ってカーブを曲がったが、とうとう大岩を直登できなくなってしまった、しかたなくまたもや左大高巻き、ロープを使って下降するとやや穏やかな渓相に変わった。

堰の上の数少ないポイント

8寸25cm

竿を出すと5寸6寸は釣れるが良渕が無いためか大物が出ない、竿をたたんで暫く空遡行するとコンクリートの堰が現れたが何の目的なのか良くわからない、砂防にしては規模が小さすぎるし、取水なら導水管があるはずなのに?、「人が入ってるのかー・・・」と、残念な気持ちもあるが、キツイV字渓の遡行なので人口物があるとホットしてしまうのも事実だ。

とにかく今日は単独なので早く撤退路を見つけておきたいが、小さな堰の近辺にそれらしき山道は見あたらなかった・・・それなら遡行するしかない。
TN谷のV字滝
堰の上から少しの間8寸が出て入れ食い状態が続き、まもなく25mの大滝が出現した、この滝は落ち口が二つある珍しいV字の滝で二段の釜を持っている、左手前の傍らに祠があって何か謂れでもあるのだろうか?かなり不気味な雰囲気のする滝である、しかし人が通えるだけの山道が何処かにあるはずなので少し安心だ。
下段の滝壷で7寸がヒットしたがリリース、8寸の魚影も確認できた、上段の釜は遠目には広さ20畳ほどで水深も3mはありそうだ、下の釜との段差は3mで上ることはできない。
祠の前でタバコに火を付けて高巻きルートを探していると、祠を巻くように僅かな形跡があった、踏み跡を辿って這い上がると廃道ではあるがほぼ水平に延びた山道に出合うことができた。
30mの大滝(段漠)
さてどうしようか?時刻は10時30分、雨脚はそれほど強くないし、撤退に使えそうな山道も発見したので、「もう少し」と遡行を続けた。
6寸以下だがよく釣れる、渓相は相変わらず険悪、そして30mの大滝に遭遇してしまった、とても暗く滝壷が小さいので魚が棲めるように思えないが、一応挨拶代わりに餌を投入してみた、やはりアタリは無かった。
さて、谷通しで先ほどの山道まで引き返すか、もう1つ滝を越えるか迷ったが、右のテラスを回りこんだ個所がもし通過できたら、あとは滝の縁をなんとかなりそうに見えたので右高巻きに取り掛かった、下で見るより結構高く感じながらテラスを回りこむと、問題の個所は手掛りの無いスラブだった「こりゃー吸盤がいくつ有っても通れん、蛸でも無理やで」と諦めたが、せっかくここまで昇ってきたのに・・・。
テラス続きで滝とは反対方向に幅30cmほどのバンドがあったので辿って行くと、木の根頼りで昇れそうな怪しいルートがあった、しかし少し昇ると次の手掛りの根が無くなって前にも後ろにも移動できなくなってしまった、ハッキリ言って半泣きである。
 前方斜め下方に1本の雑木が根を剥き出して生えている、そこから右斜め上の樅の木が根を垂れていてなんとか昇れそうだ、ザイルを木の根に通してループにし、自分の胴体を舫い結びで括って雑木まで下降、樅の木の根を使って昇り切りザイルを回収、少し登攀するとなんと廃道があり上流へ下流へと続いているではないか、ラッキーである、ここで少しの休憩と昼食の後、地形図で現在地を確認した。
TN谷堰堤(H8年竣工)
どうやら今は標高830m辺りに位置している、水線終いには営林署が開設した林道の終点が来ているはず、まさか谷通しで帰れるはずないし、左岸のこの山道を撤退するのは危険すぎる、このまま源流を目指して釣り上がり林道を使い楽して撤退する計画に決定。
山道を辿るとうまく滝上にでた、釣ってみると小型だがよく釣れる、堰堤が三段あったが魚が切れることもないまま釣り上がり、水線切れで餌切れになった。
丁度12時、林道は地形図どおりチャンとあった、なんだか突然終わってしまって少し物足りなさを感じながらトボトボとTN谷林道を下っていった。
右側に入力する内容

 

 

TS谷川
雨は相変わらずショボショボと降り続いているが、橋の上からTS谷を覗いた感じでは増水はしていないようだった、どちらかと言えば笹濁りでベストの状態だろう。 餌は車にあるし、2時間ぐらいの釣りだったら後の予定にも問題ない、嫌になったら林道はすぐ上に通っている、「じゃあ釣るしかない」と、車留めで餌を充填し、朝下降したルートでTS谷に降り立った。
入渓してみると朝方渡渉した時より5cmほど水位が上昇していたが、釣りにはもってこいの状況だ、しかし谷が緩いから外道が居そうだ、餌を流すと早速シャープなアタリがあって白い魚体が宙を舞った、手にすると7寸のイダだ、「やっぱし・・・」。
続いて5寸のあめごがヒット、しばらくチャラ瀬を遡行してやっと3mの滝に到着した。

9寸が出た渕(本日最大の良渕)

体高のある9寸

渕は扇状に広がって水深は2mぐらいか、大物の期待が膨らむ、流れ出しから5寸6寸と釣れてアタリが止まった、錘を付け加えて落ち込み周囲を探っていると、コツコツコツ!と大物のアタリがしたがヒットしなかった、今度はミミズを2匹付けて左の巻き込みを探ったら同じようなアタリがしたがヒットしない、3度目はミミズのでかいのを選らんで落ち込みの中心から左を探っていると、コツコツコツ!とアタリがあったので「まだまだっ!」と、間を置いて合わせると竿が曲がった、強い引きだったがうまく流れに乗り難なく岸に引きずりあげた、体高のある9寸の雄だった。

かなり気を良くして左から巻いたが、またまたチャラ瀬が続いて大物が出そうにはとても思えない、しばらく5寸前後をリリースしながら遡行していくと、左カーブになって瀬が岸に突き当たっている、あえて言えば「珍しく良いポイント」に久しぶり出合った、流芯には枝葉から雨粒が落ちて水中の様子は分からない、餌を上流から流し込んでいくと大きな魚影がサッと走ったかと思うと、向こう合わせで竿を引ったくって下流に走った、何も考える余裕がなかった、ただ岸に上げようと無心で引っ張った所に、偶然砂地があったので取り込むことができた、32.1cmの雌だった。
またまた気を良くして、しばらくチャラ瀬を遡行すると向こう岸にチョッとしたエグレがあり木が覆い被さっている、「珍しく良いポイント」に出合った、「きっと大物がいるでしょ」と左から餌を横投げすると枝に引っかかってしまった、ラインを引きちぎった時、細い枝が大きく揺れたので、感づかれたかなと思いながら仕掛けをセットし、再度餌を投げるとうまく枝の下に入った、間髪を入れず水面が盛り上がり竿が曲がった、流れに立ち込み玉網で取り込んだ、9寸の雄だった。

平瀬が突当たったポイント

32.1cmの雌

この谷ではこの程度のポイントで  も見逃せない

9(27cm)

少し上流に本当に良いポイントがあった、小さい落込みのある渕は、樹木で覆われて影になっているが周囲は開けて明るい、大岩があって流れ出しまでの距離がある、水深は大岩の前が一番深く1mはあるだろう。

 手前の岸に上がって渕尻を見たが大物が出ている気配はしない、慎重に渕を見ながら接近すると4寸のあめごが走った、大岩の前のポイントに餌を打ち込んでみたが反応がない、餌を変えて大岩越しに落込みをソット覗くと、落込みが左にもあって流芯が二つできてすぐに合流している、餌を流芯の間に流すと右の落込みからユラーッとでかい魚体が餌を追って浮いてきた、合流点で餌を周ったがアタリがない、出てきた右の落込みに戻ったように見えた、「でかい!尺前後はある!」、今度は錘を少し重くして右の落込みから深く沈めると、合流点の底でラインが止まった、枝を避けて上流に合わせるとグングンと引く、落込みでの取込には無理がある、大岩と張出した枝の隙間に竿を通して下流に竿をためこむと、水面でドシャバシャと暴れながらも徐々におとなしくなった、最後は玉網で取込んだ、体高がある30.2cmの雄だった。

小さな落込みと長渕のポイント

30.2cm

時刻は3時を過ぎている、もったいないが今日はこれまでと潔く納竿、林道はすぐそばにあった。 それにしても意外だった、こんな緩い平川で尺が連発するなんて、もしかして大発見かな?。

渓流釣り遡行記2004
渓流釣り遡行記2004一覧 魚止めを求めて源流を彷徨う。滝を高巻き、杣道を辿り、遡行を続ける。流れがある限り魚は棲む・・・一体、何処が魚止めなのか?それなら源頭を目指してさらに遡行を続ける。たぶん、さっきの小滝が魚止めだったのか・・・・驕り...

コメント

タイトルとURLをコピーしました