四国の渓流釣り 渓の雑学
  渓師が語る銅山川


四国の渓流釣り

渓の雑学  25/12/2
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銅山川は石鎚山から東に伸びる稜線が笹ヶ峰-ちち山の東で分岐した北の赤石山系と南の愛媛・高知の県境の山々に挟まれる形で水量を集め、馬立川と合流した後に徳島県に入り伊予川と名前を変えて阿波川口で吉野川に合流する吉野川最長の支流です。
銅山川の最源流はちち山を冠とする1.平家谷になります。

銅山川最源流部 1.平家谷の渓相

新宮ダムから馬立川を望む


支流が多いのが特徴、これだけ支流の数が多いと谷と谷の間隔が狭まくなり雨量を受ける面積が狭まり谷を流れる水量が減りそうなものだが、赤石山系の最高峰である東赤石山の1706mを筆頭に、概ね標高1500mを越える稜線を有しているので渇水時期でも水量が枯れることはありません。
また、岩盤剥き出しの谷が多く地盤がしっかりしているので山の斜面が崩落した箇所が少なく、砂防エンテで谷の流れが途切れるコンクリートの障害物を殆ど目にしないのも自然派志向の釣り人には嬉しい特徴です。

内面漁協は銅山川漁協と銅山川中流漁協(旧新宮村)に分かれていましたが、銅山川中流漁協は2011年から内水面漁業権の設定を止め漁協による放流が行われていませんが、自然繁殖や個的な人放流があるようでアマゴの姿を見ることができます。なお、銅山川漁協は柳瀬ダムより上流域でしたが、現在は28中の川(小川山を流れる部分)が含まれています。

銅山川の釣り場

銅山川は吉野川と合流するまでに4つダム(別子ダム・富里ダム・柳瀬ダム・新宮ダム)があり、ダムに集めた水の多くは瀬戸内海側の新居浜市や四国中央市に供給されるため、銅山川本流の水が少なめで釣り場は支流が中心になります。

赤石山系から流れ落ちる支流は傾斜がキツく遡行が大変です。車止めから最源流まで標高差が500mを越える谷が多く源流を釣るには登山道を利用することになります。赤石山系の人気がある山には整備された登山道が付いていますが登山道の傾斜もキツいことに変わりはありませんが、帰りは楽ちんです。
谷の傾斜がキツい故に良いアマゴが残り、「どの谷にもアマゴが居て渓流釣りを楽しめる」という言葉が大げさではありません。

瀬場谷の登山道

愛媛-高知県境がら流れ落ちる支流は比較的緩やかな谷になっています。22.落合谷、26.猿田川、28中の川は魚影が濃く人気があるようですが人気の釣り場故に釣り人が入渓した時期によって釣果のバラツキがあるのは渓流釣りあるあるでしょう。

猿田川 東支流の渓相

新宮で銅山川と合流する馬立川に初めて出かけたのは高知道の工事真っ盛りの時期で大型ダンプがひっきりなしに走り土埃で周囲が霞んだ状態が上流部まで続き、これは当分の間は無理だなぁと思った。再釣行は高知道完成後15年以上経ってからだったので谷は落ち着きを取り戻していました。源流部でソコソコの傾斜が出てきますが総じて緩い谷、源流思考の私にとって少々物足りなさを感じました。アマゴの魚影は濃くも無く、薄くも無くって感じです。

徳島県境の31.天日谷、徳島に入り32.黒川谷にもアマゴが居ます。ただ、釣査のために行くことはあるにしても渓流釣りが目的なら銅山川上流を目指した方が釣果に恵まれるでしょう。なお、徳島側の河川は吉野川漁協が管理しています。

馬立川支流 新瀬川の渓相

銅山川のアマゴ

 大物は意外な場所から出ることがあります。先に支流中心の釣りと書きましたが本流と小支流の出合、大滝大淵手前の小淵、魚止だと思っていた場所のさらに上流、小支流の小さな溜まり・・・・「こんなところにアマゴは居ないだろう」と油断していると慌てふためくことになるが銅山川です。
 
源流で4つの支流に分かれる谷
4つ目の藪沢の深淵に居た尺アマゴ

上のアマゴもそうですが、愛媛-高知県境から流れ落ちる谷のアマゴはオレンジの朱点が大きくて数の多いアマゴが勢力を拡大しています。昔は人工的な匂いがして好きになれなかったのですが、だんだん野生化してくる内に「これはこれで美しい。」と思うようになりました。
赤石山系に棲むアマゴはおとなしめの容姿をしていますが、源流域になれば谷特有の特徴を持ったアマゴに変わり、放流がされてないことが転じて在来化しているのではないかと感じることがあります。

鼻先が尖り凜々しいアマゴ
春先のサビがある時期は魚体が黄金色に輝く

鉱毒について

銅山の名が示す通り別子銅山があった地域です。別子銅山の他にも中小の鉱山跡が残り今でも鉱毒が流れ込んでいる渓があるので注意が必要です。別子銅山跡直下の3.小足谷は車道との出合から岩場が連続する見事な渓相ですが小さな支流の流れ込みしかアマゴの姿を確認できませんでした。佐々礼鉱山跡は鉱排水処理施設地がありますが27.上小川下流域は渓谷規模の割にアマゴの魚影が少ないのが現状です。11.積善谷にも鉱山後に排出口があって排水口下の岩は毒々しい色をして下流にはアマゴが居ないことになっています。

小足谷の渓相
今も鉱毒が流れているのかアマゴは居ない

まとめ

銅山川は渓流釣りをはじめた川になります。初日はボーズ、23.落合谷の大淵の落ち込みならなんとかなるだろうと思い、リール仕掛けの磯竿を持ち込み初めて手にしたアマゴの美しさに感動して見とれていたことを今でも懐かしく覚えています。
そして、源流釣りをはじめた年の解禁日が4.日浦谷でした。前日に車止めに乗り込む夜討ちスタイル、朝起きると車のドアが開かないほどの大雪、それでも、後から来た釣り人の車に追い立てられるように膝上までの雪をラッセルして取水上で竿を出した・・・・2月の日浦谷 今なら絶対にしない無謀な釣りを楽しみました。

思いで深い銅山川、今後も渓流釣りと渓流を愛してやまない釣り人の良い関係が続くよう大事にしたい谷の流れとアマゴ達です。


 渓の雑学 バックナンバー

吉野川 源流の旅
2018/12/12

瓶ヶ森・西黒森を冠とし石鎚山系南側、嶺北北側のの水を集め東進、南小川と合流する辺りから北に進路を変え最長支流の銅山川や祖谷川合流、再び東に進路を取り剣山系北側の水を集め徳島市で紀伊水道に注ぐ延長194kmの吉野川は四国最大の河川です。また、池田ダムから取水した香川用水を流域面積に加えるなら四国4県に恵みの水をもたらしていると云える。・・・・

四国のブナ分布 剣山系 四国のブナ分布 石鎚山系
2018/10/27 

 源流釣りは山奥深い深山幽谷が釣り場、魚止めを探り更に奥へ分け入る。
 人工林の暗く単調な植生とは対照的に自然林の渓間は明るく多種多様な植生が現れるので釣ってて気持ちがいい。自然林を代表する木は何と言ってもブナだ、特に大ブナは姿形が美しく神々しささえ感じることがある。ブナは天然のダムと呼ばれ山に降った雨を根元に蓄え、渇水時期でもジワジワと供給するので水が切れることはない渓間は自然の豊かさが保たれる・・・・

四国の渓魚放流状況(2018)
2018/3/1 

2018年『四国の渓魚放流状況』を更新しました。

2018年度傾向
  ・土居町内水面漁協が去年放流魚を確保できなかったため
     4月以降に放流するそうです。
  ・物部川⇒大幅放流減 高知は全体に放流減となっています。
  ・那賀川⇒放流増加傾向

四国の渓魚放流状況を深読み
2017/02/23 

2017年『四国の渓魚放流状況』を更新しました。
    ⇒四国の渓魚放流状況 
去年から、放流量が全期間(35年分)だったのを10年間に変更した。
これは、アマゴの寿命やページの見やすさを考慮した結果です。
ただ、見やすくなったか?と問われれば数字の羅列だけなのでそれなりですね。

大滝を前にして
2017/02/15 

大滝を前にして「越えるか」「撤退するか」を考えることがある。
頭の中は『滝を越えれば桃源郷になるかも知れない!!』が支配する。
実際に、滝を越えるとバカ釣れになったり大物が釣れることを何度も経験している。 いや、いい思いをしたときの記憶は何時までも残るので、思ったほど回数は少ないのかも知れない・・・・