8月いっぱいで那賀川が禁漁となるために今シーズン最後の那賀川に向かった。1週間前に平村会長と淳師匠が奥槍戸へ行くことを聞いていたので無理を言って車に便乗させてもらった。
5時前に槍戸川に着いたが、各支流の入り口には釣り人の車が止まっていて、気の早い人はすでに準備をすませて川を覗き込んでいた。我々の入渓地点はまだ、上流なのだが少々心配になってきた。禁漁前最後の日曜日とあって槍戸川はいつになく賑わっていた。
私の予定していた渓の車止めには車がなく一安心して車から降ろしてもらって準備を整えた。師匠二人は私を残して上流の奥槍戸に向かっていった。
本流に下りて渓との出会いから釣り始めた直後に人影が現れて何も言わずに岩陰にかくれた。「本流を釣り上がるのかな」と思ったが、なかなか岩陰から出てこない。しばらくすると正面のエンテの上に現れて上流に消えていった。「抜かれた・・・・?まさか」このとき初めてことの重大さに気づいた。慌てて仕掛けを終いその人影を追いかけた。案の定、その人影は、エンテをすぎた滝下で釣りをしていた。しばらく後で釣る姿を見ていると視線に気づいたのかその人影は、まさか追ってくるとは思っていなかったのだろう少しうろたえた様子だった。すかさず私が「わしを、抜くヤツがどんな人間か?見にきたんや・・・」と切り出した。口調はやさしく言ったつもりだがこのとき私は完全に怒っていたからとんでもない皮肉に聞こえただろう。人影は、きまりが悪そうに滝上を指差して「この渓を上がるのですか?」と聞いた。私は、静かにうなずいた。それから、しばらく色々話をするうちに険悪なムードも解消していった。
「どうしてもこの渓を釣りたいの」と私が聞くと人影は「釣りたい」と言った。まぁこんなところでもめていても仕方ないことだし、何より二人で釣りあがれるほど大きい渓ではない。私より若干若い釣り人に、快くではないが、この渓を譲ることにした。「じゃ、この渓を譲るけど少しついて行ってもいいかなぁ」その釣り人は「かまいませんよ」 渓は小渓で水量も少なめだが、変化にとんだなかなかいい渓だ。少し譲ったことに後悔しながら、竿を終い釣り人の後をついて行った。
その釣り人は、竿の振込みも、合わせもしっかりしているし小さい魚はちゃんと放流している。なかなかのものだと感心した。ただ、気に入らないのは餌がイクラということだ。私は、どうもイクラはアマゴに共食いを推奨しているようで好きになれない。少しついていって渓を下ることにした。釣り方もしっかりしているのだから先着順のルールだけは是非守って欲しい。
本流まで下って無線で師匠二人と連絡を取ると師匠らも奥槍戸に先行者がいて松三郎出会いから300m程上から大ほら貝橋までの本流を釣りあがっているとのこと。松三郎出会いから本流を何百mか釣りあがって新しい足跡が現れたので師匠二人を追いかけることにしたが、しかし、師匠二人はずっと上から入渓したらしく(後でわかった話) 竿をしまって追いつくのに3時間近くかかってしまった。支流の出会いから1時間、追いついてから2時間、合わせて3時間程しか釣りができなかったのが残念、釣果も貧果に終わってしまった。
釣果8匹 最大15.0cm
平村会長 42匹、淳師匠 20匹 最大22cm
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