四国の渓流釣り 源流釣り入門 地図を読む

  手強い渓の地図を読む


四国の渓流釣り

 

源流域の地図は等高線が混み合い、しかも地図に書かれている割合が支配的なので茶色の線がゴチャゴチャして何かややこしいことになっています。
地図を読むとは、このややこしそうな等高線を読むことです。
しかし、等高線は尾根と谷を分けて見ることができれば簡単に地図を読むことができます。
尾根と谷の見分け方
尾根はピークから丸みを帯びて谷に下ります。
谷はピークやコルに向かい尖ってツキ上げます。
この形状の違いは同じ標高を横に繋げたときの幅の大小からくるもので、その幅が広い尾根は丸くなり、狭い谷は尖ることが基本の特徴です。中には幅が狭い尾根、広い谷もありますが地図で尾根や谷を追うときの等高線イメージとしてはこれでいいと思います。

このページでは最源流まで詰めたいと思いながら何年も辿り着けなかった手強い渓の地図を読んでいきます。


概念地図

オレンジ⇒主尾根 ⇒谷 ⇒手強い渓 ピンク⇒最源流
先ずはじめに地図を大まかに見た概念的な谷の全体像を把握します。
手強い渓は赤石山系の西赤石山から物住頭、物住頭から上兜山の稜線に源を持ち北斜面を流れ下り高速松山道東の北で種子川と出合い本流の国領川と合流します。標高差1525m、沿面距離7700m、平均斜度が10°を越えるためかなり急峻な谷だということが分かります。
谷を挟む両尾根が狭くなっています。谷と尾根の間隔が狭いと水は蛇行を繰り返す傾向があります。蛇行する場所は岩壁に水圧が掛かり水深の深い良淵が形成されます。地図から見えるる手強い渓の水線は蛇行を繰り返しており良淵が沢山ありそうです。
源流域では数少ない地名表記から読める事柄は『魔戸の滝』です。滝記号だけでなく名前が付いている有名な滝があることが分かります。


それでは地図の細かいところを読んでいきます。

参考地図1
参考地図2

源流を遡行するには道記号が最も重要な地図記号です。
一車線3m~5.5m ほぼ舗装されていますが山奥では未舗装なところもあります。
軽車線1m~3m 舗装・未舗装率は半々くらいだと思います。源流の車止め付近はこの道です。
徒歩道1m未満 登山道、山仕事の道など 登山道は登山ブームのおかげで信頼できます。
源流釣りの入渓や撤退でお世話になるのは徒歩道の点線道です。地図にない分岐があったり、障害物があれば急に方向を変えたり、踏み跡に欺されたり・・・・ 道迷いの要素はいくらでも転がっています。少しでも迷いを感じたら地形図を確認すれば大事に至りません。
左の写真は『』付近の快適な林道です。快適さに注意を怠っていると分岐を見逃します。
右の写真は岩場で林道が途切れました。続きの道が大岩の間を通っていることに気づくまで長い時間が掛かりました。
滝記号は2つしかありませんが魔戸の滝から続く標高差150mは連瀑になっていて水平な場所は滝壺しかありません。一度だけ「大物が居るかも・・・・」ってロープを使い幾つかの滝壺を攻めてみたのですが、安全を確保できなかったり、最深部まで仕掛けが届かなかったり生半可な釣り人では手に負えない場所でした。横に林道が付いているのでパスした方が賢明です。
二つ目の滝上辺りから渓は緩くなります。
右の写真は『』付近の崖上から渓を見下ろした写真です。
この崖場を上手く回り込めば入渓が可能になります。
岩・崖記号 この記号が連続して出てくると地形図は読めません。
近づかないにこしたことはありませんが遡行途中に岩・崖記号に出くわせば現場対処技術が必要になります。左の写真の滝は左に巻き道がありました。
右の写真の滝はズーッと続いていて岩場と植生の境に踏み跡がありました。この連瀑を地図に表そうとしたら岩・崖記号以外では表現できないと思います。
』から入渓したら岩・崖記号を高巻きの繰り返しに時間を取られてしまうので魚止めに届きません。林道が近づく『』または林道と交差する『』で遡行を区切った方が釣りに集中できます。逆に最源流を詰めたいのなら『』・『』から入渓すればいいと思います。
源流部は谷幅が狭くなり水量も少なくなります。
まだ、地形図には岩・崖記号が記載されています。しかし、渓の規模が小さくなったおかげで遡行が楽になります。また、両サイドの斜面が緩くなったことで滝が現れても大高巻きの心配はなくなります。
建物記号 登山道沿いなら山小屋や避難小屋などがあります。
上の写真は営林小屋の廃屋跡が残っていました。放置されたままになるなので何かしらの形跡が残っています。渓沿いの林道は、この営林小屋に続く道だと思われます。私が持っている古い地図にはこの道が記入されていなかったので源流の営林小屋に辿り着くにはどうすればいいのか分からなくて『営林小屋の谷』と呼んでいました。スマホの地図アプリなら国土地理院の最新の地図が表示されいるので廃道なりなくなった道や新しくできた道やを知ることができます。
渓の水線は営林小屋跡付近で途切れますが渓はまだ続いています。水線は1.5m以上の川幅があるものとされますが季節や降雨の有無によって変わるのでアバウトな記載になります。
渓はピーク・コルに向かってツキ上げます。渓を囲んでいる上兜山、物住頭、西赤石山とその間にあるコルに向かい谷は分かれながら細くなっていきます。
源流域で見かけるその他の地図記号
セキ(砂防エンテ)工事したときの道が残っている場合もありますが乗り越えるのが厄介なので好きになることができません。滝と同じで1個書かれていても複数存在している場合があります。複数書かれている場合は砂防エンテだらけになっていることが多いです。
三角点 測量に基準になるので位置の確かさはピカイチです。
植生記号 広葉樹、針葉樹、笹 大まかな植生を表しています。針葉樹林の多くは植林です。地図に記載されていなくても山作業用の道が付いているので辿っていけば下界に通じる道や車道に続いている可能性が大きいです。


参考地図3
 
撤収ルートを読んでみます。
帰り道は渓沿いのA一択のように思われます。
最源流の詰め方次第では上兜山の西尾根までの傾斜が比較的緩く近そうなので尾根まで這い上がりBの上兜山登山道を下る手があります。(広尾根の分岐で迷いそうになる場所が幾つかあります。次で解説します。)
それと地図には載っていませんが以前にD辺りからEへ平行に続く道を使ったことがあります。Eの道は西赤石山の登山道なので迷う心配がなく渓沿いのAより安心できます。本当は時間がない中Cの道を探していましたが見つけることができませんでした。(釣りは渓通しに辿りAの道が記載されていないのが前提でしたので帰り道を確保する必要に迫られていました。)
尾根道の分岐
尾根はピークで分かれます。ピークとは地図上の尾根の等高線が○で閉じる場所ですが1/25000地形図の等高線は10m間隔になっています。つまりピークとコルの標高差が10m以下なら○で閉じる表記がありません。尾根を歩いている時も同じで数mの標高差に気づかないことが殆どです。もし、尾根の分岐が分かれ道になっている場合、何も考えず真っ直ぐ進んでしまったり、間違った踏み跡を辿ってしまえば確実に道迷いが発生します。特に下りの広尾根は注意が必要です。
道迷いを防ぐには事前に地図で尾根の分岐を確認し予測しておくことが大事です。
確認する地図はスマホの地図アプリなら現在位置が分かるしGPSの軌跡を残しておけば道に迷ったとしても復帰するのに役立ちます。

左の地図『』は大きい尾根に導かれ道迷いする可能性があります。
右の地図『』は真っ直ぐ進み道迷いする可能性があります。

まとめ
地図読みは机上で行うだけでは意味がありません。
地図と実際の地形を見比べることを繰り返しながら等高線の間隔や繋がり具合と自身の距離感や傾斜感と合わす作業が必要です。地図とのズレを感じたらその場で地図を見直して下さい。
源流釣行で地図を読むとは地図と自身の体感を重ねることです。